数年前、この事業構想を伊丹でお聞きした時、実現できるのか不安に感じたこともあったが、すっかり伊丹の名物イベントに定着しつつある。関係者の熱意に頭が下がる。
グレードアップした第2回。8店舗がエントリー。一般参加者が店で実食し、投票する。決勝に勝ち残った5店舗でグランプリを競う。決戦の場は<長寿蔵>。参加費はアテ5品に地酒「老松」(300ml)付で3000円。決勝当日は午前午後合わせて100名の市民審査員が実食し、これぞ伊丹というあてを選んで投票箱に酒瓶のキャップを投入するシステム。
私は今回、特別の御計らいを得て特別審査委員として参加。別室で伊丹2大醸造メーカーである白雪&老松の役員方、ぐるなび王者、主催者のNPOいたみタウンセンターMダム理事長の5人で実食審査。特別審査員はキャップ2個の投票権を有する。光栄至極である。
チケットと引き換えに決勝の5品をテーブルに一気に運ぶ。基本的に店頭提供価格を500円で統一。一品づつ完食後に取りに歩いていたら、酔っぱらって千鳥足になりそうだ。
栄えある決勝進出は以下の5品。少しでもコース料理っぽく、私なりに下記の番号順に試してみた。生の貝系オードブル、煮物小鉢、鶏燻製、魚煮付、ローストビーフである。
1)BAR LINGUA*FRANCA「ホタテ貝のマリネ〜バルサミコ香る苺のソース〜」
仮面舞踏会を思わせる凝った器と皿である。帆立が大きく女性が一口で頬張れないかもしれないが私はオッサンなので一口。……。プリプリである。酢は抑え目だ。器に残った赤い汁を啜る。トマトか梅かと思いきや、苺ソース。思いっきり甘かった。慌てて品書きを見ると、キチンと「苺のソース」と書かれている。一発目から度胆を抜かれた。
2)ほこ〜魚菜と地酒〜「帆立しぐれ煮と奈良漬け和えたん」
帆立が続く。1食目はフレンチ風(らしい)だったが、この作品は和のテイスト。帆立をシグラせたものが地酒に合わぬわけはない。コピコピ地酒をやっていると、旨さが膨らむ。食べ勧めると、ポリッパリッとした異質な食感に突き当たる。奈良漬である。小さく刻んだものだが、見事なアクセント。清酒発祥の地・伊丹らしい香りが鼻孔を抜けていく。
3)開華亭「鶏チーくん(燻)のネギソース和え」
帆立と一瞬だけ食感は似ているが、こちらは鶏の燻製。ビジュアルは2品目と幾分似ているものの、中華料理店らしい工夫に溢れている。地酒だけでなくビールや紹興酒も合いそうだ。燻製好きとしてはスモーキーな香りに心ときめくが、アクセントのチーズが絶妙。チーズと日本酒も相性はなかなかのものである。〔次夜後編〕

決勝進出の5品。どれも絶品。