2013年05月31日

第732夜:牛丼戦争〜麺との邂逅編〜【Aho-Boiled】

 「やきそば牛丼」。2013年4月上旬より牛丼三大メジャー<Sき家>にて思いっきりイチオシ展開され始めた期間限定の変わり牛丼である。ニュースでも取り上げられたほどの変化球だ。

 やきそば+牛丼。海の家か公営ギャンブル場にありそうな組合せだが、別々に頼むとそれほど珍しいものでもない。しかし、これが丼という一つの家に同居すると、ありそうでなかった目からウロコ的どんぶりに早変わりする。

 関西ではお好み焼やそば焼をオカズに白御飯を頬張るのは昼の定番ともいえる。ゆえに関西以外では衝撃度はより高かったのではないだろうか。

 ニュースで知った時、気になって仕方がなかった。ある寒の戻った遅めの昼、大阪十三交差点の<すき家>に飛びこんだ。迷わず‘彼’を注文。390円。牛丼は280円なので割高感はあるが、牛丼に焼きそばが付いてくると思えばお得なサイドメニューという見方もできる。

 当たり前だが一から焼きそばを焼くわけでもない。牛丼と変わらぬスピードで出てきた。ブツを見た。……。ポスターと仕上がりが異なるビジュアルである。‘塊を乗せた感’が強い。

 野菜だけが具の焼きそばが牛丼に乗っているのか、肉と野菜入りの普通の焼きそばが白御飯の上に乗っているのか。ただし、肉の量は普通の焼きそばよりかなり多めと感じる。このあたりが、「やきそば丼」と「やきそば牛丼」の違いなのだろう。

 小袋に入った青のりをパラパラ振りかけた。すき家の卓上カウンターにはソースが常備されていないので、別容器に入った秘伝(と書いてあった)のソースを垂らした。卓上の紅生姜をたっぷり乗せた。食欲の湧くビジュアルに変わってきた。

 まずは、焼きそばを啜る。……。啜ると言うより、固まっているので噛み切ると言った方が近い。よくある総菜コーナーの焼きそばの味だ。

 焼きそばを食べ終えたスペースには牛丼が出てきた。牛丼を頬張る。思いっきりすき家の牛丼味だ。しかし、焼きそばのソースが若干沁みて、微妙に変化している気がしないでもない。

 半分食べ終えた後は焼きそば、牛肉、紅生姜、白御飯を区別なく口に放り込んでいく。……。これほどそれぞれの食材が一体感を示さない味わいも初めてだ。B級+B級がA級にならずC級に。しかし、アッパレである。牛丼屋で麺類を啜ることができる日が来るとは。チャレンジ精神に乾杯。好評なら定番化するかもしれないが、道のりは険しいかもしれない。

 食べ終えて、さっそくFB「一日一麺道同盟」に投稿した。会員番号自称2番として役目を果たさねばならない。北九州若松の麺友・N氏から「F原紀香の上にD蜜をのっけた感じ?」とコメントが寄せられた。残念ながら、そんな豪華絢爛かつ肉感かつ官能的な味わいではなかった。オセ●の二人を無理やり仲直りさせようとして舞台に立たせたが、全然スイングせず客席が引いているような味に近かった。

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<すK家>の「やきそば牛丼」。
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2013年05月30日

第731夜:至高の暮坪そば【遠野(岩手)】

 暮坪かぶ。岩手県遠野原産の幻のかぶである。春と秋の年2回収穫だが、各々1カ月程度という短期間。大根のような形状なのだが、味はかぶ。保存が効くものでもなく、希少価値だ。

 暮坪かぶを世に知らしめたのが、グルメ漫画の金字塔『美味し●ぼ』。グルメ系マンガコレクターの私はこの作品を60巻ぐらいまでは集めていたが、徐々に説教臭くなり、明らかにネタが苦しくなってきたため、収集を断念。この作品に紹介される究極(または至高)のメニューを実食する機会など一般にはほとんどないため、共感が難しいのも一因だ。

 暮坪かぶを薬味とした「暮坪そば」は初期から中期にかけて取り上げられていたが、普通の一話ではない。主人公の父・海原雄●氏を驚愕、絶句させたほどの「究極(至高)の薬味」だからだ。大根おろし(辛味大根)でないことを見抜く海原氏にも驚愕したが。

 2013年1月下旬の正午前。花巻空港から遠野経由で釜石へ向かう途中、同行のI手県庁T橋氏と昼食を腹に入れること。飛びこんだ店はロードサイド沿いの<ばんがり>。店内は地元民で大賑わい。ボリュームたっぷりの各種ランチが人気のようである。

 メニューを見た私の眼に、「暮坪そば」なる名称が飛び込んできた。店内を見渡すと、『美味●んぼ』に取り上げられた一話がPOPとして観ることができる。

 私は迷わず注文しようとした。しかし、メニュー表記に「品切れ」という恐怖の一文が。私は、絶句した。諦めきれない絶望中の私を見かねて、高H氏が注文取りのお兄さんに聴いてみた。しばしの厨房確認後、「なんとか2人分なら出来そう」という福音が天から降りてきた。

 地獄から天国へ。歓喜に打ち震えていると、再びお兄さんが人間これほど申し訳なさそうな顔が出来るのかと感心するほどの表情で「やっぱり無理でした…」。

 ダメージ倍増だが、諦めて他のメニューに投げやり気味に目を通していると、三度お兄さんが自信たっぷりの晴れ晴れしたご尊顔を浮かべ「やっぱりできそうです!」。

 注文段階のジェットコースターで疲れてしまったが、結果オーライである。実に気持ち良い接客である。私は喜び勇んで暖かいそばに。T橋氏はマンガと同じく冷たいざるそばに。

 ほどなくして出てきた。湯気に独得の辛みを含んだ鮮烈な香りが混じっている。暮坪かぶの風味を消さないように、まずはそのまま出汁を啜る。……。ほんのわずかの土臭さが大地の力強さを感じさせる。かぶの辛みが出汁に溶け込み、わさびとは異なる鮮烈で切れ味のあるシャープさを醸し出す。極上。蕎麦も打ちたて挽きたてらしく、コシが抜群である。

 半分食べ終えた後、一味唐辛子と別皿にあった天かすを投入する。一気に油のコクが増す。モロモロと溶けた天かすとかぶが混ざりあい、清純と怠惰が入り混じったエロチックな味わいになる。付け合わせの漬物も申し分なし。確かに大根のおろしそばとは風味が異なる。荒降ろしなので歯ごたえも楽しめる。夢中で啜り終えた。

 蕎麦湯をほっこり呑みながら、至高のメニュー実食の貴重な経験に感謝する。ちなみに、私たち2人が暮坪そば、最後の中の最後。次回は5カ月先に復活するそうだ。私は、遠野市を見降ろす霊峰・早池峰山の神々に深く心で頭を垂れた。

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マボロシの「暮坪そば」。
posted by machi at 09:03| Comment(0) | 岩手県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月29日

第730夜:カッパはキュウリ、アヅマはホップ【遠野(岩手)】

 遠野物語。岩手県遠野市近辺に伝わる怪異譚、伝統行事などを拾遺した日本民俗学の聖書である。遠野は花巻と釜石のちょうど中間に位置している。私はいつも素通りするだけで、遠野市内を視察する機会がなかった。

 遠野観光として絶対に外せないのが「カッパ淵」である。「デンデラ」という姥捨て風習が色濃く残る史跡は気分が重たくなってしまうので、カッパ淵あたりが妥当である。

 東の遠野(岩手)、西の北九州若松(福岡)。私は勝手にカッパの東西二大聖地と喧伝している。伝説や昔話が今も色濃く息づく民話的世界が、街なかから少し離れると広がっている。駅前、交番、観光施設など至る所にカッパオブジェが出現。狛犬っぽいカッパまで存在している。

 私はカッパを連想する際、つい「カッパッパ〜ルンパッパ〜♪」のCMでお馴染、セクシーなエロカッパを連想してしまう。そんな艶っぽいカッパをぜひ捕獲したい。

 夏はレンタサイクルが便利だが、冬は豪雪地帯なので車で移動する。駐車場からカッパ淵に歩いて移動する道すがら、収穫を終えて一面の雪世界に溶け込んでいるホップ畑の間を抜ける。

 「遠野産ホップ使用キリ●一番搾り」。私がこの世で最もシビれるビールである。特に生の旨さは意識が100万光年彼方にぶっ飛びそうになる。缶は全国で入手できるが、生は東北だけ。それもひと月程度しか遭遇できない。大きな東北の楽しみだ。カッパは遠野産キュウリが大好物だが、私は遠野産ホップが大好物である。

 この’生’ビールが呑めるのは、私が知る限り10月下旬から12月上旬まで。これを置いている店では日本酒や焼酎に移行せず、ひたすら生をノドに放り込み続ける。最後は常宿のホテルが‘マヨイガ’になり、なかなか辿りつけなくなるのだけれど。

 カッパ淵は常堅寺という立派な寺の裏を流れる本当に小さな小川である。かなり分かりにくく、案内がいなければ中々辿りつけないだろう。辿りついた時、目の前のこじんまりした日本の原風景に、DNAレベルで何かの電流が走った。雪の中を流れる水は澄み切っている。

 夏の観光シーズンはボランティアのオヤジさんから「カッパ捕獲許可証」なるものをいただけるそうだ。私が訪れたのは真冬なので捕獲許可証を入手できなかった。気を取り直して、ルンパッパ〜なフェロモンカッパを捕獲せねばならない。

 私は頭ではなく目を皿にして、淵を様々な角度から覗きこんだ。……。カッパどころか、生命の痕跡すら感じない。案内役を務めて下さった岩T県庁高H氏があることに気付いた。木からキュウリを吊るしているそうだが、それが撤去されているという。

 氏の見解は胡瓜を吊るしているのは夏の観光シーズンだけではないかということ。私の見解は違う。セクシーなカッパは実在しており、キュウリを実際に食べてしまったに違いない。

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カッパどころか生命の痕跡さえ感じられぬ「カッパ淵」。
posted by machi at 06:59| Comment(0) | 岩手県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月25日

第729夜:東京駅「三陸さんまとほたての蒲焼弁当〜東北復興弁当〜」【Ekiben】

 東北復興弁当。新聞紙のように凝ったデザインの包装紙に思わず目を引きこまれる、東京駅構内で捕獲した復興支援駅弁シリーズである。JRグループとヤフーが共同開発した作品で、一つに付き50円が復興支援活動に寄付されるという。

 なぜ、ヤフーなのか。ネットを使って直接美味しい魚を食卓に届ける「復興デパートメント」という企画があるそうで、そこからスピンオフの形で生まれた駅弁だそうである。しかも、駅弁の中でも`エキナカ‘限定だ。新聞っぽいデザインの包装紙なので、ひと際目立っている。

 2種類あった東北復興弁当のうち、私が選択したのは「三陸さんまとほたての蒲焼弁当」。被災した石巻の水産会社社長の熱い思いが、新聞記事風に印刷されている。これを読みながら味わうと、旨さが倍加する。

 「野菜の煮物」で様子を確かめた後、大きな「ほたての蒲焼」で前半戦を盛り上げる。照りが新幹線の照明で怪しく煌めいている。少し生っぽさを残しているところに鮮度の良さを感じる。しかも、2ヶ入りだ。

 口に一気に運ぶ。……。プリプリのモチモチ。蒲焼のタレ加減も絶妙。盛岡駅で捕獲した「恋し浜帆立照り焼き弁当」と互角の勝負である。

 ご飯が実に味わい深い。普通のご飯ではなく「ワカメご飯」。適度な塩気が食欲を喚起する。磯の香りが鼻孔をくすぐる。玉子そぼろの黄色が美しい。

 佃煮陣営もしっかりと脇を固めている。「ワカメの佃煮」は歯ごたえが楽しい。北上川から流れる豊富な栄養源と太平洋の荒波に揉まれて身が厚く旨みも増すそうだ。

 「コウナゴのピリ辛煮」はイカナゴがさらに小さな時(コウナゴと言うそうだ)を使用した贅沢な一品。くぎ煮とは全くことなるふんわりと柔らかい風味。今やいかなごは超高級魚なので、さらに稚魚は守った方がいいのではないかと心配してしまう魔性の味わいである。

 蒲焼や佃煮系は全体の味が甘く濃い。たるんだ舌をキリリとさせる「赤かぶ酢漬」と「酢蓮根」が彩りと酸味で全体を引き締めている。これらを一口齧ることで、蒲焼がさらに旨くなる。

 わかめご飯が3分の1になった。おかずも大方食べ尽くした。シメは「さんまの蒲焼」である。箸でふわりと千切ることができる柔らかさに目を見開く。口に運ぶ。……。脂が乗りつつもサッパリとした上品さ。タレの甘さと脂の甘さが見事に二乗している。ご飯が進む。

 これは酒の肴としても優れた駅弁である。私が新幹線車中で食したのは昼下がり。食了後、仕事せねばならず泣く泣くノンアルコールビールを流し込んだ。残念至極である。

 「震災の石巻ではなく、おいしい石巻を全国に広めたい」。包装紙に印字された水産会社社長の意気込みに、思わず拍手を送ってしまう。この駅弁、他のシリーズもあるようなので、東京駅で見かけたらすぐさま捕獲すべし。被災地復興のお役にも立てます。

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東北復興支援駅弁。味もお見事。
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2013年05月24日

第728夜:冒険する琥珀料理【久慈(岩手)】(後編)

 ステーキを口に運んだ。……。甘い。柔らかい。香ばしい。タレが染みこんだ周りの白御飯も旨みを増している。あっという間に食べ尽くした。

 琥珀丼は日本一の琥珀産地である久慈の地層に見立てた驚愕丼だった。表層(第1層)は鮮度抜群の三陸魚介類、第2層は久慈産ウニごはん、第3層は久慈産ホウレンソウ&海苔、最下層(第4層)は岩手県産ステーキ。太古の野生と悠久の時の流れが丼という一つの小宇宙に凝縮されている。

 気になる値段は、琥珀ストラップ付きで2,300円。海鮮丼とウニ飯とステーキ丼とホウレンソウに久慈名産まめぶスープが付いていると思えば、極めて良心的といえる。

 大満足で外に出た。再度フラフラして駅に戻る。今度はJR久慈駅構内だ。電車の待ち時間が1時間以上ある。暑さに出歩く気が失せた私は待合室でぼんやりしていた。

 待合室でひと際目を引くのが、立食い蕎麦のカウンターである。本来はひっそりしているものだが、メニューの豊富さ、ポップさ、とにかく派手で存在感たっぷりである。

 メニューをぼんやり見ていた私は、ある一点にクギ付けになる。「こはくラーメン(うどん・そば)」410円である。

 こはくラーメン?琥珀色のラーメンなのだろうか。410円なので、ウニが入っていることはないだろう。すると、あんかけラーメンなのだろうか。あんかけのトロミと色を琥珀に見立てているのだろうか。

 思いっきり満腹だったが、陸の孤島・久慈へ訪れる機会は多くないだろう。思わずフラフラとラッコのように腹を両手でポンポン叩きながら、私はこはくラーメンを注文してしまった。

 感じのいいおネエさんが手際と愛想よく作って下さったブツが目の前に置かれた。私は目を剥いた。想像と全く異なっていた。真っ黄色なのである。

 なんだこれは。おネエさんにお聞きすると、「干し菊」であるという。八戸・久慈地方は干し菊も名産であるらしく、食用として用いられるそうだ。これでもかというほど干し菊がトッピングされている。

 出汁を啜った。うどん汁の和風とラーメン汁の中華が入り交ざった不思議な味わいである。干し菊が両者を仲介し、苦みとアクセントを与えている。鼻から入り込む菊の香りも鮮烈だ。

 麺を啜る。当たり前だが、ラーメンである。この麺と干し菊が絡みあい、新たな世界を表現している。ひらたけというナメコを3倍巨大にしたキノコもトロミと歯ごたえを楽しませる。

 こはくラーメン、恐るべし。立食いそば(ラーメン)はここまで進化したのか。琥珀丼とこはくラーメン。驚きと興奮に満ちた冒険心あふれる琥珀料理である。

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JR久慈駅構内の立ち麺屋。目にも眩しい「こはくラーメン」。
posted by machi at 07:26| Comment(0) | 岩手県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする