まちなかバル、酒樽夜市、酒ワゴン…。呑んだくれリーダーたちの牽引力と、下戸が集う事務局の酒に流されぬ客観的な調整力が見事にかみ合う伊丹ならではの酒イベントが、過去幾度となく伊丹で開催されてきた。回数を重ね、ついに酒ではなくその伴侶にスポットが当たった。
このプロジェクトの素案(というか、タイトル)を耳にしたのがおそらく1年前。正直申し上げて、この企画が実現するとは思わなかった。それも、これほどまでの質を備えて。
午前午後の2部構成。午前の部は11時半から、午後の部は13時半からそれぞれ90分間。予選を勝ち抜いた伊丹市内の5店舗が脳と腕に工夫を凝らした極上のアテを創作。単なる美味しさだけでなく、‘伊丹の地酒’に合うかどうかがポイントだ。灘や伏見でなく伊丹の地酒である。
私は午前の部に参戦。一般公募の市民審査委員は各50名。ルールは極めて明快。伊丹の地酒を呑みながら5種類のアテをつまみ、一番合うと思った料理の投票箱に酒のキャップを放りこむだけ。参加料は500円で地酒「上撰摂州男山」300ml瓶付き。アテ料理は参加店によって異なり、300円から700円。地酒をお代わりしたければ500円払うと300ml瓶が渡される。
公平性を期すべく、お代わり地酒ボトルはキャップを外したまま渡される。持ち帰りは実質的に不可能。呑みきらねばならないのだ。某アイドルグループの総選挙なるイベントはファンによるCDの買い占めが、政治の世界の総選挙でも一票の格差が問題になっているようだが、伊丹アテワンはド酒呑みのオオカミもか弱いカモシカも等しく一票。公明正大である。
初開催イベント。進行や段取りはイメージできていたが、実際に会場入りし受付を済ませた私は、その芸の細かさに唸らされっぱなしだった。
立食形式かと思いきや、高級レストランのように黒服に席まで案内される。家族、カップルごとに異なる。一匹セイウチの私はむろん一人席。結婚式披露宴のような雰囲気だが、浮かれた様子は微塵もない。壮絶なバトルを予感させる緊張感が会場を制圧する。
主催者挨拶や来賓挨拶など何一つないスガスガしさも心地よい。司会のO川嬢によるシンプル極まりないルール説明の後、アテワンスタート。上品な伊丹人らしく、静かにゆっくりと席を立つ。これが伊丹でなければ、新年バーゲンセールのようなカオスになるだろう。
私は各ブースに淀みなく移動。食べ比べるため、一気に5種類を買い揃えてテーブルに並べた。その時に、少し冷静になった。私は当初、試食程度の分量と思いこんでいたが、どれもたっぷり一人前はある。あっという間にアテの豪華絢爛フルコースが眼前に展開した。私は地酒をワイン風カップにドボドボ注いだ。さて、どのように攻略しようか。〔次夜中編〕
和やかさと緊張感が同居するアテワン会場。
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