2013年03月30日

第692夜:第1回!伊丹ATE-1グランプリ【伊丹(兵庫)】(前編)

 「ATE-1グランプリ」。日本国内にどれほどの●―1グランプリが存在するのか存じ上げないが、ついにここまでニッチに来たか、と感動すら覚えるグランプリが2013年2月24日、清酒発祥の地・兵庫県伊丹市内の清酒メーカー直営レストラン「長寿蔵」で開催された。

 まちなかバル、酒樽夜市、酒ワゴン…。呑んだくれリーダーたちの牽引力と、下戸が集う事務局の酒に流されぬ客観的な調整力が見事にかみ合う伊丹ならではの酒イベントが、過去幾度となく伊丹で開催されてきた。回数を重ね、ついに酒ではなくその伴侶にスポットが当たった。

 このプロジェクトの素案(というか、タイトル)を耳にしたのがおそらく1年前。正直申し上げて、この企画が実現するとは思わなかった。それも、これほどまでの質を備えて。

 午前午後の2部構成。午前の部は11時半から、午後の部は13時半からそれぞれ90分間。予選を勝ち抜いた伊丹市内の5店舗が脳と腕に工夫を凝らした極上のアテを創作。単なる美味しさだけでなく、‘伊丹の地酒’に合うかどうかがポイントだ。灘や伏見でなく伊丹の地酒である。

 私は午前の部に参戦。一般公募の市民審査委員は各50名。ルールは極めて明快。伊丹の地酒を呑みながら5種類のアテをつまみ、一番合うと思った料理の投票箱に酒のキャップを放りこむだけ。参加料は500円で地酒「上撰摂州男山」300ml瓶付き。アテ料理は参加店によって異なり、300円から700円。地酒をお代わりしたければ500円払うと300ml瓶が渡される。

 公平性を期すべく、お代わり地酒ボトルはキャップを外したまま渡される。持ち帰りは実質的に不可能。呑みきらねばならないのだ。某アイドルグループの総選挙なるイベントはファンによるCDの買い占めが、政治の世界の総選挙でも一票の格差が問題になっているようだが、伊丹アテワンはド酒呑みのオオカミもか弱いカモシカも等しく一票。公明正大である。

 初開催イベント。進行や段取りはイメージできていたが、実際に会場入りし受付を済ませた私は、その芸の細かさに唸らされっぱなしだった。

 立食形式かと思いきや、高級レストランのように黒服に席まで案内される。家族、カップルごとに異なる。一匹セイウチの私はむろん一人席。結婚式披露宴のような雰囲気だが、浮かれた様子は微塵もない。壮絶なバトルを予感させる緊張感が会場を制圧する。

 主催者挨拶や来賓挨拶など何一つないスガスガしさも心地よい。司会のO川嬢によるシンプル極まりないルール説明の後、アテワンスタート。上品な伊丹人らしく、静かにゆっくりと席を立つ。これが伊丹でなければ、新年バーゲンセールのようなカオスになるだろう。

 私は各ブースに淀みなく移動。食べ比べるため、一気に5種類を買い揃えてテーブルに並べた。その時に、少し冷静になった。私は当初、試食程度の分量と思いこんでいたが、どれもたっぷり一人前はある。あっという間にアテの豪華絢爛フルコースが眼前に展開した。私は地酒をワイン風カップにドボドボ注いだ。さて、どのように攻略しようか。〔次夜中編〕

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和やかさと緊張感が同居するアテワン会場。

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posted by machi at 07:23| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月29日

第691夜:サクララウンジ、1時間勝負【Aho-Boiled】

 サクララウンジ。J●Lが空港内で直営する極上の空間である。誰でも侵入できるわけではなく、マイレージクラブのエメラルド以上、ビジネスクラスの利用客(確か)等に限られている。

 月に数回機上のセイウチになる私は、あっという間にマイルやポイントが溜まる。使いきれずに有効期限が過ぎてしまうこともしばしばだが、いつの間にか「エメラルド」会員にランクアップ。一つ下のクリスタルとの違いの一つが、サクララウンジを利用できるかどうかである。

 サクララウンジを利用する際は、朝一番がほとんどである。仕事を訪問先で当たり前だが控えているため、珈琲やトマトジュースぐらいしか普段は口にできない。生ビールサーバーやウィスキーがドンと鎮座しているのだが。

 ただ飛行機で移動するだけで特に業務がないある日の夕方。出発1時間ちょっと前にラウンジ入りした私は、ついに思う存分アルコールをノドに放り込む機会を得た。すべて無料。トキメキすぎて脳天から湯気が出そうになる。自分に課した制限時間は1時間。うっかり寝てしまって飛行機に乗り遅れるようなことがあってはならない。

 1杯目は「サ●トリーモル●生ビール」。ビールグラスをサーバーにセットする。ボタンを押すだけでビールグラスに7:3の黄金比率で注がれる。口に運ぶ。……。モ●ツらしき麦のまろやかなノド越しと香りを楽しむ。

 間髪いれず2杯目に。「アサ●スーパード●イ生ビール」。2種類のメーカーの生ビールサーバーがそれぞれ2台。計4台も設置されている。爽快なキレ味がノドを滑り落ちる。オツマミは常備されているチーズとクラッカー。これも食べ放題だ。

 3杯目は再び●ルツの生。注いだ後、2口だけ呑み、冷蔵庫からトマトジュースを取り出して注ぐ。オリジナルの「レッドアイ」だ。色合いも美しい。トマトの酸味とビールの苦みがお互い絡み合ってセクシーだ。

 4杯目以降は3種類あるウィスキーから選択する。私は「竹鶴12年」をロックで決めた。ここまでで約40分。かなり心地よくなってきた。ウィスキーはハイボールも可能という。

 少し酔いを冷まさねばならない。豊富なジュース類やブレンド、エスプレッソ、カフェラテ、カプチーノも楽しめるドリンクバーも魅力的だ。私はブレンド珈琲をカップに注いだ。そして、思わずウィスキーをドボドボと湯気香る珈琲に注いだ。「アイリッシュコーヒー」である。頻繁にソファーとドリンクバーを行き来しながら酒ばかり呑んでいると目立ってしまうため、カモフラージュ作戦である。珈琲を口にしているようにしか見えないはずだ。

 暖かいオシボリで顔を拭きながら、フカフカのソファーに体を預け、極上の空間と時間を満喫した。とにかく静かである。思わずウトウトしそうになり、乗り過ごすところだったけど。

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サクララウンジの生ビールサーバー

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2013年03月28日

第690夜:名古屋駅「みそかつえびヒレ重」「びっくりみそかつ」【Ekiben】

 「みそかつえびヒレ重」。味噌カツ系駅弁が百花繚乱咲き誇る名古屋駅構内で確固たる存在感を示すだるま様の作品である。

 これまで堪能した味噌カツ系駅弁「みそかつ&えびふりゃ〜」「名古屋みそかつ弁当」の2箱はJR東海パッセンジャーズ様の名品だったが、だるま作品はよりローカル食が強そうで期待が高まる。昔は苦手だったが、すっかり味噌カツにハマってしまった。

 フタを開ける。たっぷり八丁味噌が絡められた大きなヒレ肉カツ1枚と、巨大エビフライ2尾が名古屋城の鯱鉾のごとく君臨している。見事なまでの黒さだが、立ち上る香りは黄金色だ。

 エビフライを齧る。……。衣に沁み込んだ味噌味に負けないほどのエビの歯ごたえと風味である。パリパリの尻尾まで頬張った後、白御飯で追いかける。口の中の濃厚な甘さが中和され、米粒の甘味がより引き立つ。ヒレカツの歯ごたえと柔らかさも見事である。

 しば漬けでさらにリフレッシュし、半分ほど食べ終えてから、サイドに鎮座する殻に包まれた卵に手を伸ばす。引き出しテーブルの角でコツコツひび割れさせ、パカっと落とす。半熟卵がトロリ。味噌カツに絡めて頬張る。……。濃厚さにマイルドなコクが加わる。

 味噌カツ、半熟卵、白御飯、しば漬け。混然一体の四重奏にニヤニヤしてしまう。さぞ隣のサラリーマンは不気味に感じたことだろう。

 「びっくりみそかつ」も同じくだるま様の名古屋駅弁。フタを外した時、私は目を剥いた。巨大な褐色大陸が眼前に広がっている。1億5千年前に水没したアトランティス大陸のようである(見たことありませんが)。分割されていない一枚岩である。このまま齧りつくのだろうか。

 一抹の不安を感じた直後、箸袋と共にプラスチックのナイフとフォークが眼前に出現。朝からキュッキュとぶ厚めに切り分けていく。何ともいえない楽しさと面倒くささが同居しているが、ナイフを動かすたびに容器ごと机をスライドするので大騒ぎ。隣のオヤジに申しわけない気持ちでいっぱいだ。怪訝な表情を浮かべている様子が視界に入らずとも伝わってくる。

 割り箸に持ち替え、辛子を塗りつけた塊にかぶりつき、噛み切る。……。肉を喰らうという満足感に満たされる。濃厚な甘さだが、味噌カツ系駅弁の特徴は冷めても充分に旨いこと。むしろ熱々より奥行きが増すように感じる。白御飯との相性も言わずもがな光悦である。

 巨大味噌カツに隠れている野菜があった。モヤシナムルである。口に運ぶと、爽やかなピリ辛。食欲を増進させる。

 マヨネーズ和え系サラダが2種類ある。一つは定番のポテトサラダだが、もう一つはなんだろう。マカロニか?箸でつまむと、平べったい。どうやらきしめんのようである。

 巨大みそかつ、きしめんサラダ、シブい脇役のモヤシナムル…。様々な味噌カツ系駅弁の中で、私にとってはこの作品が決定打になるかもしれない。

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名古屋駅弁「みそかつえびヒレ重」

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名古屋駅弁「びっくりみそかつ」

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posted by machi at 07:25| Comment(0) | 駅弁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月27日

第689夜:禁断のキャッチフレーズ【岡崎(愛知)】

 大奥。実情は色々とタイヘンそうだが、オトコなら誰もが憧れる禁断のハーレムである。大奥と言えば華のお江戸。江戸幕府を開いたのは徳川家康氏。家康氏が生まれたのは愛知県岡崎市。ゆえに岡崎には21世紀の今も大奥が存在する。

 岡崎幕府樹立に向け将軍候補、大老候補、側用人候補、大目付候補らと密談すべく<どぉーん>というステキに大流行の海鮮居酒屋に足を運んだ。その店の横路にドーンと<大奥>と染め抜かれた電飾看板が目に飛び込んできた。間違えて足を踏み入れそうになったが、それ以上にインパクトのある店のキャッチフレーズに私の動きが止まった。「熟女キャンパス」。

 「熟女」も「キャンパス」も正反対な要素はあると言え、共に珍しくもない言葉である。しかしこれらが合わさると、在りそうで無いというより、決して存在してはならぬ禁断の組合せになる。青春の爽やかさが皆無の胸やけしそうなキャンパスが想像される。ちなみにこのキャンパス、朝ではなくけだるい昼の12時から開校するそうである。

 幕臣候補たちとドォーンと黒生麦酒や西三河の幸をたっぷり腹に入れた後、飲食店が密集しネオン煌めく名鉄東岡崎駅前をブラブラ散策した。賑わっている駅前には様々な看板が百花繚乱。ホロ酔いながら注視すると、実にシュールなキャッチフレーズが目に飛び込んでくる。

 ガールズバーは別に珍しくもないが、「ミセス&ガールズバー」というキャッチの店があった。これも斬新である。ただの店員がすべて女性のバーという気がしないでもないが。

 <竹取物語>という店名はいかにも大型チェーン系の香りだが、そのキャッチが「個室物語」。「個室」も「物語も」別々なら違和感ないが、合わさると何ともいえない淫靡な響きになる。

 缶詰がメインの居酒屋<缶z−メン>。店名センスも独特だが、この店のキャッチコピーにはぶっ飛んだ。<女子高生居酒屋 缶z−メン>。凄まじい組合せである。外から少し覗くと、明らかに女子高生とは思えぬ女性たちがサラリーマンらと談笑していた。

 店の名前は忘れたが、悶絶のキャッチコピーがあった。「バイキングキャバクラ」。キャバクラは都市の繁華街にはほぼ存在する。バイキングもホテル朝食をはじめ人気の形態だ。どちらもありふれた商いだが、これが合わさると想像が飛躍する。キャバ嬢が食べ放題なのか?

 岡崎幕府のM井将軍候補が店の前の黒服に意味を質した。即答が帰ってきた。キャバ嬢食べ放題ではなく、料理食べ放題のキャバクラという意味だった。ナルホドと思わず首肯。

 岡崎は店のキャッチコピーセンスが極めて優れた街だが、店名そのものがイッてしまっているのは、私は15年ほど前に夜の種族として毎夜学生時代を過ごした札幌のススキノである。

 北海道拓殖銀行(愛称:たくぎん)破たん直後に現れた<た●ちん>。某世界最強ハンバーガーチェーンの黄色いMマークの上部に二つのチ●ビらしきマルチョボが施された<ヌクドナ●ド>……。これらはごく一例。見事なセンスに脳味噌がフヤけて溶けてしまいそうである。

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素晴らしきシュールなセンス。

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posted by machi at 06:55| Comment(0) | 愛知県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月25日

第688夜:ローソクの灯はいつまでも【岡崎(愛知)】

 <揚中>。愛知県岡崎市中心市街地に屹立する、コンクリート打ちっぱなしなのに独得の風情と質感があるシブすぎるおでん居酒屋である。

 2013年2月下旬。岡崎市の中心市街地を揺るがす某プロジェクト会議終了後、まちづくりに熱心な三河商人たちと極寒の夜空を超えてこの店に辿りついた。店内は大賑わいで、マスターが一人で奮闘。ほとんどセルフ状態で瓶ビール。サッポロのラガーというあたりもシブい。

 2012年11月から月2回岡崎を訪れている私は、そのたびに様々な傑物とお会いしている。芋焼酎湯割で体を温め、絶品のおでんやアテをつまみながらお話をお聞きした<磯部ろうそく店>の磯B氏もそんなお一人。日本に(たしか)23しかないろうそく専門店で、氏は9代目当主。家系図を遡れないだけで、実質は15代目という岡崎の名士中の名士だ。

 歴史ある氏の店が2011年1月11日、大火で焼失した。気力体力以上に、代々受け継がれてきたろうそくづくり必需道具も失われた。これらは現在では入手不可能で、廃業への拍車をかけた。

 そんな惨状が新聞に大きく報道された。磯B氏は三河商人たちが口を揃えて慕い、敬われる人望者。磯部ろうそく店の灯を消してはならない。まさにオール岡崎体制で氏の再起を支援すべく動き出した。地元マスコミもバックアップし、火災からちょうど1年後の2012年1月11日にプレオープン、翌月に本オープンを迎えた。

 氏はある方に声を掛けられたという。「普通、このように慕われているのを目にするのは自分の葬式の時だけだ。生きている時に見られたのはシアワセなことだ」(たぶんこんな感じ)。さすがの氏も心震えたそうだ。再起に向け動き出したという新聞記事を見て、見ず知らずの同業者が廃業するので道具の提供を申し出て下さったという奇跡も起きた。

 磯B氏に対して、老若男女すべての三河商人たちは「このような人物になりたい」「もし自分の店が被災したら氏のように周りがバックアップしてくれるだろうか」「どうすれはこれほどの人望が得られるのだろうか」と尊敬の念を抱くと同時に厚すぎる人望に対して小さな嫉妬の炎さえ灯るという。

 私は初めてお会いしたが、若手の活動に対しても頭ごなしに否定するのではなく、常に肯定から入っていく姿勢、まずは人が住みやすい街にすべきという氏の視点に唸らされた。

 若手もベテランも混じった呑み会。先輩をリスペクトしながらも軽口や辛口が飛び交う自由闊達な気質。先輩方の行動、生き様が脈々と今の三河商人リーダーたちに息づいている。事業承継だけでなく、まちづくり承継も盤石。岡崎活性化への道を灯すローソクは、いつまでも消えることがない。

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posted by machi at 07:30| Comment(0) | 愛知県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする