2012年10月31日

第594夜:皿の上のカオス【若松(北九州)】(前編)

 1/2ポンド。1ポンドは450gで、当たり前だがその半分である。日本人にとっては慣れない中途半端な単位だが、肉好き、特にアメリカンステーキを愛好する志士にはなじみ深いものがある。私は1ポンドステーキ探求をライフワークの一つとしている。

 1ポンドステーキをこれまで幾度となく味わってきたが、ライスやスープがセットになると腹が膨れてしまう。サラダも必要ない。ただひたすら、脂身のないあっさりと固い肉の塊と真剣勝負を繰り広げる。水では頼りなく、ビールでは腹が張るので、ウィスキーのロックが最も力強く受け止めてくれる。国産和牛の霜降りでは絶対に不可能。3口で胸やけしてしまう。

 1ポンドステーキを平らげる私にとって、1/2ポンドなど露払いのようなもの。それがハンバーグであれ何の問題もない。慣れないナイフとフォークを駆使して挑むだけだが、それがハンバーグではなく、ハンバーガーならどうなるか。

北 九州市若松地区郊外にある<Ike′s DINER(アイクス・ダイナー)>さんは、北九州屈指のヌードラー・U野氏が私に強く薦めて下さった店。ただし、麺系ではなくバーガーショップだ。

 数々の(食の)修羅場を潜りぬけ、少々のことでは動じぬ私ですら驚愕すること間違いなしだそう。氏から自信がみなぎっている。前夜の酒を抜くには麺が良いのだが、望むところである。

 氏と談笑しながら店に向かう。美しい景気を眺めながらぼんやりしていると、唐突に到着した。私は思わず「どこですか?」と首を傾げた。U野氏が差した先は、建物が一軒ぽつんとあるだけ。イチゲンでは絶対に気付かない。よほど詳細な地図が必要で、カーナビごときでは確実に見逃してしまうだろう。

 少しの緊張と共に、氏に続いて店内に入った。店内はカジュアルなアメリカンテイスト風味。おもちゃ箱のような楽しさがある。愛想よく笑顔のステキなマスターにほっとする。U野氏はマスターN氏は旧知の仲だそうである。

 店のルールがさっぱり分からないので、上N氏に注文その他をすべてお任せする。氏はハンバーガーのレギュラーサイズと自家製ジンジャーエールを注文。レギュラーと書かれているが、パテ(ハンバーグ)は1/2ポンド(約230g)。大きさが中々イメージできない。

 私はぼんやりと店内のポップカルチャーあふれる店内に見とれている間、氏は軽快に動いている。カウンターの上にあったポットから茶色の液体をカップにドボドボ注いた。続いて数種類の瓶箱から様々な物体を容器に取り、テーブルの上に並べた。

 カップの液体は紅茶のような色合い。口を付けると、ホットコーヒー。これぞアメリカン、というほのかな味わいだ。容器に盛られたのは、アーモンドやブルーベリーなどの乾きモノ系。チョコレートもある。これらがすべてセルフサービスの呑み放題食べ放題である。〔次夜中編〕

121031アイクスダイナー@(若松).JPG
初心者ではまず気付かない。

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2012年10月30日

第593夜:酔っ払いに安全なまちづくり【若松(北九州)】(後編)

 ワークショップを終えた夜、若松地区商業者の皆さま方と恒例の懇親会になだれ込む。北九州の地物刺身や焼酎を堪能し、2軒目はクールなバーでトニックやバーボンをノドに流し込む。

 私は鯨飲どころか痛飲5歩手前程度の酒量だったが、訪若前夜に岩手県宮古市から夜遅くに帰神し、間髪入れず翌朝に九州入りしたので、幾分疲れがじわじわとにじみ出てきた。まだまだ呑み足らぬ様子の絶好調男・若松地区現地マネージャーU島氏の誘いを振り切り、私はホテルの部屋に戻った。

 部屋に戻った瞬間、猛烈な空腹に襲われた。あまり食べなかったせいだろうか。時間は24時を過ぎている。スナックや居酒屋なら空いているだろうが、ラーメンなどの汁モノを啜りたい。夜の若松に不案内な私は、ラーメン屋どころかコンビニの所在地すら分からない。

 遅くまで開いているラーメン屋にでも連れて行ってもらおうと、牛J氏の携帯を鳴らした。電話の向こうからは盛り上がっている様子が伝わる。氏は仲間とスナックで3軒目を決行しており、そこにはフードメニューもあるという。空腹の窮状を訴えた私は、汁モノを早々と諦めて合流すること。場所が分からないので、ホテルの前まで氏に迎えに来てもらうことにした。

 外に出た。U島氏はまだ来ていない。ホテルの前にベンチに私は腰掛けて待った。何となく、ゴロンと横になってみた。幾分冷え込んできたものの、外のキリっとした冷気は酒で火照った頭と顔と体に心地よい。見上げると、雲の切れ間から星が顔を覗かせている。

 移動疲れか、ほろ酔いのためか、ベンチに同化したまま夜空に吸い込まれそうなほど気持ちよくなってきた。食欲もどこかへ吹っ飛んだ。私は、天地と一体になった。

 U島氏が迎えに来たが、私はこのまま幸せな気分に浸りたかった。わざわざ電話で呼び出した牛J氏を無理やり追い返し、夜空を見つめ続けた。やがて瞼が重くなり、私の意識が北九州の夜空に溶けた。

 猛烈な寒さでハッと目が覚めた。どこだ、ここは?ガバっと体を起こすと、横にはホテルの入口。時計を見た。冷え込む屋外のベンチで3時間ほど爆睡してしまったようだ。

 寒さに震えながら部屋に戻る。ホテルに宿泊しているアラフォーオヤジが、部屋ではなくホテル前の外のベンチで寝るアホっぽさに泣けてきたが、身の周りを確かめた。

 日本のシン・シティ(背徳の街)・北九州。平成24年とは思えぬ昭和の香り漂う犯罪が多発しマスコミを賑わしているが、私の財布も携帯も無事。ケガもしていない。

 安全・安心マップワークショップでは若松の危険ポイントが数か所指摘されたが、酔っ払いにとっては安全な街と言えよう。通りがかりの紳士淑女か、ホテルの従業員が起こしてくれても良かったような気もするけれど。

121030若松商店街セミナーA(若松).JPG
「青」が安全安心ゾーン、「赤」がデンジャラスゾーン。

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2012年10月29日

第592夜:酔っ払いに安全なまちづくり【若松(北九州)】(前編)

 商店街安全・安心マップ。北九州市若松地区商店街では、2012年1月に商店街内の市場が全焼する大規模火災に見舞われた。それを機に防災の意識が高まり、2012年度は全国商店街支援センター「商店街の自主取り組み提案事業」を活用して、4回程度市場の再建や防災・防犯に関するセミナーを開催している。

 2回の座学を終え、3回目はワークショップ形式(2012年10月17日)の「商店街安全・安心マップ」の作成に着手。緊急避難場所の認識、消火設備の設置場所、避難訓練の実施体制、非常時に連絡体制などの現状を確認。防災だけでなく防犯の視点も取り入れ、見回りルートや交番等の位置把握に努める。

 想定される災害は地震、津波、高潮、洪水、火災、土砂崩れ、暴風(台風)などが挙げられるが、発災後ではすでに遅し。特に地震と火事、暴風は日本中で起こりうる。

 もしライフラインが止まったら(電気・水道・ガス・固定&携帯電話等)、もし陸の孤島になったら(道路&鉄道寸断、船着き場の崩壊、若戸大橋の陥落等)……。災害シュミレーションに備え、日頃から防災ではなく「減災」意識を高めることが、万が一の際に被害を最小限に食い止め、いち早く復旧・復興に向け歩み出すことが可能となる。

 大きなエリアマップを参加者で取り囲み、赤のポストイットに危険ポイントを各自記入。木造建築密集地域、石垣の近く、人目の届かない暗い場所、一方通行の狭い道路、急な段差、老朽施設(アーケード・街路灯・看板含む)、川・海などの水べり、山裾(土砂崩れ)…。

 青のポストイットにはサポートポイントだ。病院等医療機関、食料品店、電気店、金物店、(防災)公園、津波避難ビル、学校、公民館、AED設置ポイント、交番、消防署、自販機、神社…。平常時はともかく、コンビニも含まれるかもしれない。安全か危険は判断がつかないことは黄色のポストイットを使用する。

 ポストイットはどんどん描きこまれ、随時貼り付けられていく。青のサポートポイントはかなり分散した印象だが、赤の危険ポイントはある程度集中している。木造建築密集地域、痴漢が出没する人目の付かない暗い場所などだ。

 若松は津波の心配はないかもしれないが、海抜が極めて低いそうで、高潮被害が頻発するという。防潮堤は景観問題に発展し、盛り土は区画整理を伴うため一大都市整備プロジェクトになってしまう。費用はどちらも莫大だ。

 安全・安心マップを3色ポストイットワークショップで仕上げていくと、ひと目で安全、危険ポイントが分かる利点がある。ただし、商業者視点だけでなく地域住民の意見も反映させれば、異なったマップが生まれるだろう。

 次のステップは、今回の結果を踏まえ参加者全員で赤青ポイントを実際に歩き、チェックする。その内容を反映させ、情報発信していく。安全・安心マップづくりに終わりはない。常にブラッシュアップしていかねばならない。〔次夜後編〕

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ワークショップ方式で「商店街 安全・安心マップ」作製中。盛り上がっております。

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2012年10月28日

第591夜:一日一麺同盟の夜明け【Aho-Boiled】

 一日一麺。麺を40年近く啜り続け、加齢とともにますますその嗜好が強まっている私の信条である。しかし最近、鉄の情念を根底から覆す理論が私のような肥満メタボの間を中心に凄まじい勢いで席巻した。炭水化物や糖質を徹底的に排除、敵視する糖質制限系ダイエットである。

 私も関連本を何冊も読了した。試したこともある。詳細は省くが、確かに効果はある。夕食時はおかずを肴に酒を呑み、白飯を腹に入れる習慣が20年以上ないので比較的容易だったが、朝と昼は苦戦を強いられる。それ以上に、麺偏愛者にとって啜ることができないのが何よりつらかった。禁断症状に苦しんだ。

 私はメン派として、忘年会シーズンにはコメ派と鍋のシメの選択について激しい闘争を繰り返してきた。また、パン派の勢力もあなどれない。メン、コメ、パン。この3大メジャーのバランスは絶妙だが、私自身はコメ、パンを長期間口にしなくとも軽く耐えられる自信はあるが(かつ丼とハンバーガーは別格)、メンは2日も口にしないと動悸が激しくなる。

 意志薄弱な私は中途半端に麺との距離を保ってしまった。結果は、過去最高の体重更新。マイ・リトル・ラバー=ヌードルに申し訳が立たない。一日一麺の志を高く保たねばならない。

 幕末の志士が活躍した明治維新。現在も様々な維新が取りざたされているが、一人では何もできない。身分役職年齢の区別なく、志を同じくする盟友たちと藩(地域)を超えた大きなウネリを巻き起こさねばならない。

 このような私にとっては重要だが世間様には極めてどうでもいいクダラナイことに情念を燃やし、2012年10月25日深夜、盛岡のホテルでウィスキーを呑み酔っ払いながらフェイスブック上で全国の眠れる麺志士たちに決起を促した。反響も少しだけあり、改めてスリーパー(眠れる麺士)たちの存在に心強さを感じた。まもなく、一日一麺が日本を席巻する夜明けである。

 呼びかけた以上、本当に夜明けに麺を啜り、私自身が実践せねばならない。霧が街を覆う朝6時、ホテルすぐ近くの24時間ラーメン店<末廣>へ。客は誰もいない。私は券売機でラーメンを選択。葱入れ放題という魅力を存分に味わった。ただし、ネギを入れすぎてスープが冷めてしまい、最後はネギの味しかしなかった。私もまだまだである。修行が足りない。

 ネギ入れ過ぎに自分の未熟さを痛感した2012年10月26日、北九州屈指のヌードラーであり、私の麺友・U野氏が早速フェイスブック上に「一日一麺同盟」を立ち上げて下さった。

 一日一麺どころか一日三麺のツワモノ、三日一麺程度のお姫さまも大歓迎。メン派同盟軍として勢力を拡大し、コメ派帝国軍やパン派枢軸軍との果てなき戦いに向けて。皆さん、どんどん啜りましょう。コメ派、パン派の皆さんも切磋琢磨で頑張りましょう。

「一日一麺同盟」のフェイスブックはコチラ⇒http://www.facebook.com/#!/1day1noodle

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盛岡市大通<末廣>にて。入れ放題のネギを入れ過ぎて反省。

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2012年10月27日

第590夜:弾丸スピード蕎麦【岩泉(岩手)】

 流しそば。岩手県岩泉町の日本三大洞窟の一つ・龍泉洞に隣接する<龍泉洞観光会館>内の大食堂にある名物メニューだそうである。

 岩手県庁のT橋氏と龍泉洞探索の前の昼食として大食堂を訪ねた私は、入口の食券売り場で数ある魅力的なメニューの中から、「流しそば」を選択。流しそうめんのようなものだろうか。

 美しい川が近くを流れているためか、川魚の王・イワナの握り鮨なる珍しいメニューもある。流しそばとセットで1250円。川魚を焼かずに味わうには初めて。迷わずセットを注文した。

 カウンター席に案内された私の目に飛び込んできた異様な景観に、思わずウォッと呻き声が漏れた。カウンターのはるか彼方に岩の壁があり、そこから竹筒が突き刺さっている。竹筒が半端なく長い。風流というより、世紀末感が漂っている不穏さである。

 流しそばの謎が解けた気がした。そばの入ったザルを竹筒の終着点に設置。岩壁の向こうから竹筒を伝う冷たい流水を浴び続けるそばを手繰りながら味わうのだろう。

 モンドセレクション(国際食品オリンピック)世界最高品質賞(金メダル)を受賞した「龍泉洞の水」はペットボトルで商品化され、お茶や缶コーヒーもある。この水が冷水器で呑み放題である。豪気なサービスだ。

 龍泉洞の水をグビグビ呑んでいると、目の前にザルが置かれた。……。私は戸惑った。ザルには何も入っていない。首を傾げていると、私の目の前に竹筒に水が流れ出した。

 最初はチョロチョロだが、途中からすごい勢いになる。程なくして、その流れに乗ってそばがザルに飛び込んできた。あまりのスピードに箸でキャッチできない。流れるというより、落ちてくる感じだ。

 私は呆気にとられた。流しそうめんのようなマッタリした雰囲気など全くない。これほど迫力のある流し系メニューは初めてである。時速40kmで回転寿司が回っているようなものだ。

 茫然自失のまま、箸をザルに伸ばし、ツユにつけて啜り込んだ。……。清涼にして武骨、自然かつ無垢。キリっと冷えた大自然の恵みでそばが引き締まっている。歯ごたえも香りも良く、ノド越しもピシッとしている。無我夢中で啜り込んだ。単なる大仕掛けではなかった。私は、不明を恥じた。

 イワナ鮨をつまむ。……。淡泊で上品な白身である。純粋な旨みだけが鼻孔を抜ける。川魚特有の臭みが全くない。カワハギかカレイに近い食感、味わいか。これは岩手県の、それも岩泉町まで足を運ばないと口にできない極上の逸品だろう。

 大満足で店を出た。充実した土産物売り場で、龍泉洞の水を買った。流しそば、2回食べるものではないと思うが、ぜひ一度はお試しあれ。驚愕すること請け合いである。

121025流しそば(岩泉).JPG
すさまじい勢いの「流しそば」。

(付記)
麺偏愛者であり、一日一麺を信条とする私は、このたび志を同じくする麺友の協力を得て、フェイスブック上に「一日一麺同盟」を立ち上げた。メン派同盟軍の勢力拡大およびコメ派との果てなき攻防のため、よければポチっと「いいね」をよろしくです。
「一日一麺同盟」⇒ http://www.facebook.com/#!/pages/%E4%B8%80%E6%97%A5%E4%B8%80%E9%BA%BA%E5%90%8C%E7%9B%9F/368370726580132
posted by machi at 06:39| Comment(0) | 岩手県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする