2012年06月29日

第510夜:恋人も濡れるカツレツ【横浜(神奈川)】

 カツレツ。純日本でも純欧米でもない、日本独自の和洋食といえる。そんな文明開花の和洋食が似合う街といえば、残念ながら港町・神戸ではなく、横浜。恋人も思わず濡れてしまう横浜屈指の風情あるオトナの街・馬車道に、その名も<勝烈庵>総本店がある。

 立派な白壁の蔵を思わせる重厚な外装。軽い気持ちで入りにくい豪奢な雰囲気だ。勇気を出して暖簾を潜り、木戸を引く。目に飛び込むのは、5人以上の厨房でキビキビとカツを揚げている職人さんと、割烹着を着た大勢の仲居さん。

 パンフによると、昭和元年に創業した老舗。洗練されたヒレ肉、独自研究を施された生パン粉、野菜と果物を2日間煮込んで1日寝かせた秘伝ソース、しじみ椀のしじみ、赤味噌までこだわり尽くしたそうである。

 朝からホテルの大浴場でひとっ風呂浴び、伊勢佐木モールをホタホタ散策して喉の渇きと空腹を覚えた私は、まだ正午にもなっていないが間髪いれず瓶ビールを注文。各種ある定食の中から、定番かつ王道と思われる「勝烈定食」(ご飯・キャベツおかわり自由)を選択した。

 荒ぶる興奮を鎮めるべく瓶ビールをグラスに注ぎ、一気に喉に放り込んだ。……。人生とは、何てスバらしいのだ。喜びに震えながら店内を見渡す。見覚えのあるタッチの書や絵が複数飾られている。パンフを再読すると、日本の代表的版画家・棟方志功画伯の作品。店名書体も画伯という。店の格式を何倍も上げている。

 定食が運ばれてきた。8等分されたヒレカツが黄金色に輝いている。ゴクリと喉が鳴る。端の2切れにソースをあらかじめドボドボ浸すようにぶっかける。寝かせて、後で味わうのだ。この食し方は大傑作コミック『食の軍師』(日本文芸社)を参考にさせていただいた。

 最初の一切れは塩のみで。口に運ぶ。……。初体験といえる衣のふんわり感だ。油も極上なのだろう、全くしつこくない。噛みちぎるというより、口の中でほどけると言った方が正しい。ヒレ特有のサッパリした旨みが凝縮されている。ビールで口の中を洗い流す。2切れ目の塩&辛子がさらに旨くなる。3切れ目は秘伝ソース、4切れ目はソース&辛子だ。

 生キャベツと瓶ビールも無くなった。生キャベツ追加を進められるが、これで充分。残り4切れをおかずに、ご飯、しじみ赤出汁、漬物をグイグイ頬張る。‘アッイ〜だけが〜俺を〜惑わせぇる〜♪’愛だけでなく、カツレツとビールも私を惑わせる。

 カツを齧る。ご飯を頬張る。喉を押し広げていくような感覚が心地よい。赤出汁のサッパリ感が、定食全体を引き締める。そして、残しておいた、ソースドボドボ寝かせヒレカツ。最高にご飯に合う。しんなりとした衣も、エロティックでセクシー。熟した色気がある。

 何気なく箸袋を見た。「世界遺産 吉野熊野古道の箸」。宮内庁御用立の箸メーカーの作で、箸袋に入れてお持ち帰りし、水洗いしてご家庭で大切に使ってほしいと書かれている。シビれた。恋人だけでなく、私も昼から濡れそうになった。

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<勝烈庵>勝烈定食

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2012年06月28日

第509夜:新大阪駅「近畿味めぐり弁当」【Ekiben】

 「近畿味めぐり弁当」。新大阪駅で発売されている、近畿2府4県の魅力がぎっしり詰まったJR東海パッセンジャーズ様の気合駅弁である。

 兵庫県産食材は「ぶなしめじ」と「淡路島玉葱」、和歌山県産は「紀州梅」、奈良県産は「牛蒡」と「水菜」がエントリー。

 京都府産食材は、奈良と同じく「水菜」と「西京味噌だれ(味噌だれに西京味噌20%使用)」、大阪府産は「富田林丸茄子(果肉が締まりキメ細かい)」。そして、存在感を誇るのは滋賀県。「近江牛」「近江鶏」「近江米」という御三家が入閣し、弁当の主役を張っている。

 近江牛は有名だが、「近江鶏」は初耳(初目)だった。飼育期間が通常より長いため、歯ごたえと旨みがあり、余分な脂もなく飽きのこない味らしい。

 これら11種類の近畿圏内産食材を活かしたメニューも凝っている。まずは筑前煮(近江鶏、人参、牛蒡、こんにゃく、蓮根、どんこ椎茸、絹さや)。具だくさんで、上品な味づけ。先鞭として相応しい味わいだ。

 枝豆をつまみに缶ビールをグビグビ呑む。「水菜と揚げの浸し」は実に瑞々しい食感だ。「出し巻き玉子」のポクポクした旨みを堪能する。

 存在感のある「丸茄子揚げ煮」。揚げ出し茄子といった風情だ。口の中で茄子と油のコクが混ざり合いとろけていく。この後に味わう「生姜天」のシュパっとした酸味としっかりした歯ごたえが口を引き締める。

 「しし唐素揚げ」で軽く中休みを入れ、メインおかずである「近江牛メンチカツ」を攻略。ウスターソースで下味が付けられており、ビールが進む。大きくて食べ応え満点だ。

 じっくり炊かれた「大根含め煮」を堪能する。これは西京味噌だれを付けて味わう。駅弁が一気に京懐石に早変わりする。極めて高貴な味付けだ。

 おかず部門を制圧した。いよいよ、ご飯ものに舞台を移す。

 「かやくご飯」なので充分の味が付いている。これを箸でチビチビ削り取るように口に入れる。充分な酒の肴だ。凝っているのは、「たくあんじゃこ煮」。単なるたくあんでなく、魚出汁で煮詰められている。ひと齧りするだけで、ご飯も酒もビュンビュン進んでしまう。

 近畿2府4県では、やはり滋賀県の健闘が光る。近江牛は各種駅弁でも大活躍しており、いずれも駅弁の枠を超えた実力をアピールしている。我が生活拠点・兵庫は幾分寂しいと言わざるおえない。

 とにかく、近畿がまるごと楽しめる。「地産地消 駅の弁当メニューコンテスト」において、近畿農政局長賞を受賞というお墨付きだ。

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新大阪駅弁「近畿味めぐり弁当」

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2012年06月27日

第508夜:ハンバーガーに託した夢【佐世保(長崎)】(後編)

 今でこそ傭兵的まちづくり屋に落ち着きつつあるアラフォーの私だが、20代半ばの目標は、30代前半までにハンバーガー店を経営することだった。しかし、時代は妄想の先を行く。若干異なるものの、私の考える内容に近い展開を、佐世保バーガーのチェーン店は実践している。

 私が狙ったのは「ビジネスランチ」需要である。私のような団塊世代ジュニアから少し上あたりから、ジャンクフードが席巻し始めたと考える。年をとると和食やあっさり味を好むようになるが、やはり幼少から親しんだジャンクな味はいつまでも心に残る。

 幼少からジャンクフードに親しんでいる欧米人らは、老人になってもおそらくアブラギッシュなメニューを好んでいるはず。なぜなら、彼らにとって「ソウルフード」であるからだ。

 私のような中年になると、ハンバーガーを食べたくてファストフードチェーン店に行きたくても、若者の活気に店内が制圧され、イマイチ落ち着かない。別に100円じゃなくともよい。少々値が張ってもよいから、ゆっくり落ち着いてハンバーガーを味わいたい。

 サラリーマンやOLの昼の外食は、平均600円から800円ぐらいだろうか。単品500円のボリュームたっぷりハンバーガーにポテトなどの付け合わせ、ドリンクでオトナのオトコが十分満腹になれば、「ビジネスランチ」の需要は十分に開拓できると考えた。大企業の重役が、1,500円の豪華なハンバーガーランチを食べている風景が日常になるかもしれない。

 2012年現在では、残念ながら東京の都心や大阪のビジネス街にわずかの需要があるかどうか。しかし2040年には、ジャンクフード世代が高齢者になっているのだ。

 佐世保バーガーはテイクアウト中心だが、カフェレストランを併設し金銭にゆとりが出てきたハンバーガー世代をターゲットにした展開は、可能性が残されている有望マーケットである。

 将来ビジョンを描きつつ夢は決して諦めなかったのだが、忙しさに翻弄されたまま、高級ハンバーガー店をとっくに開業しているはずの年齢になった。ちなみに開業費用は軽く見積って5千万円。毎日呑み歩いている私に貯金などないが、もし開業資金があれば、来月からでも開業したい。

 せっかく日本最西端の駅・佐世保まで来たのだ。帰りの長崎行き列車でも味わうべく、佐世保駅構内の<LOG KIT>で「佐世保スペシャルバーガー」を購入した。空腹ではないので最も小さいサイズを購入しようとしたのだが、店員さんが佐世保バーガーといえばコレ!と力強く推薦してくれる。

 列車が動き出した。缶チューハイをグビリと呑み、熱々のスペシャルの包みを開ける。そもそも、持てないほど熱いハンバーガーは想像が難しい(レンジで温めすぎたときだけだ)。いわゆるベーコンエッグバーガーだった。かなりの分厚さを両手で万力し、齧る。玉子のコクとベーコン、野菜、パンが混然一体。私の夢の味である。

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<LOG KIT>佐世保スペシャルバーガー

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2012年06月26日

第507夜:ハンバーガーに託した夢【佐世保(長崎)】(前編)

 佐世保バーガー。今や佐世保を代表するご当地グルメであるだけでなく、ボリュームたっぷりの高級ハンバーガーの代名詞として全国的に広まっている一大ブランドだ。

 全国B級ご当地グルメのまちづくりで、「ハンバーガー」も一大勢力になりつつある。鳥羽(三重)、淡路(兵庫)、白河(福島)なども取り組んでいるらしい。ユニークな地産地消の工夫が込められているものも多いが、やはり佐世保が先駆者だ。

 若干店によって異なるようだが、‘手作り’‘できたて’などが佐世保バーガーの定義という。具たっぷりでかなり分厚く、袋に入った状態のものを一度両手で万力のようにぐっとつぶし、それから頬張るのが推奨された攻略法。そうしないと、口に入れることさえ不可能だ。

 佐世保バーガーの歴史は古く、第2次世界大戦終了後の特需に沸いた朝鮮戦争に遡る。当時の米兵にレシピを聞いたことがはじまりとされている。米兵の食欲すら満たす破壊力満点のボリュームである。

 全国的に一気に広まったのは、直近の10年間らしい。讃岐うどんと佐世保バーガーは、ご当地グルメ全国普及率の両横綱であるかもしれない。

 市内郊外に数ある佐世保バーガー専門店。「佐世保バーガーマップ」が便利で、どこを攻めようか迷う楽しみがある。佐世保バーガーには厳しい認定制度があり、クリアした店に外れはなさそうだ。ちなみにオリジナルのイメージキャラクターは、あの『アンパ●マン』シリーズの作者・やな●たかし先生が担当。官民一体の気合いが感じられる。

 ブラブラしながら、まず訪れたのはベーコンエッグバーガーを生んだ<Big Man>。先駆けの店らしい。私はエッグ抜きの「ベーコンバーガー」を注文した。自家製ベーコンをたっぷり惜しげもなく用いた極上の一品。私のようなベーコン偏愛者にはたまらない。しかし、これは数あるメニューの中でかなりシンプルな方である。

 店内で食べることもできるが、素早くコンビニでキンキンに冷えた缶ビールを購入。少し移動し、緑豊かな公園の木陰で頬張った。ベーコンの歯ごたえと塩味、燻製特有の焦げた香ばしさ、肉脂でまみれた口中をビールが洗い流す。ガツンとした食べ応えである。1ヶで十分に満足できる。冷えた缶ビールが何倍も旨くなる味わいだ。

 佐世保市内の中心部は、緑あふれる芝生公園が充実。アメリカ人も日本人も若者はピクニックを楽しんでいる。街のど真ん中に広大な芝生公園を持つ都市は、潤いがあり本当に素晴らしい。市民が幸せそうに寛ぎ、余裕が感じられる。老人の日向ぼっこも絵になる。まるでハリウッド映画のようだ。

 芝生でビールを呑みながら楽しそうにマナー良く談笑する若者たちを見ると、心が浄化する。日本もまだまだいいぞ、という気にさせられる。〔次夜後編〕

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<Big Man>ベーコンバーガー

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2012年06月25日

第506夜:日本一元気なレモンステーキ【佐世保(長崎)】

 「日本一元気な商店街」。まちづくり業界で名を馳せる長崎・佐世保市の中心市街地にある商店街のキャッチフレーズだ。‘直線’アーケードとしては日本一の規模を誇り、一大繁華街を形成。様々な工夫あるイベントを年中展開している。 年配者も多いが若者も多く、実に老若男女バランスが取れた客層のようだ。

 佐世保の商店街や繁華街を歩くと、異様にマッチョな外国人の多さにまず目を奪われる。これは在日米軍の佐世保基地の兵隊およびその家族。一方、白い水兵用セーラー服が凛々しい日本人の若者も多く見られる。これは自衛隊佐世保基地に所属する隊員たち。一般市民に交じり、ツワモノたちが商店街を縦横している。

 制服のまま思いっきり堂々と白昼デートをしている日本の若手自衛隊員を何組か見かけた。同伴女性の衣服着用面積割合は体全体の3%程度。大胆な露出ぶりに思わず目が奪われる。

 活気あふれる商店街や繁華街の中で見られる、日米両軍が入り乱れた違和感。沖縄とは少し雰囲気が異なっている。普段はお互い干渉せず、という暗黙の不文律がありそうだが、アルコールが入ると一触即発的剣呑感が横溢する、緊張感を孕んだ独特の街である。

 佐世保の2大ご当地グルメと称されているのは、「佐世保バーガー」と「レモンステーキ」のツートップ。どちらもアメリカテイストあふれる雰囲気を醸し出している。ただし、レモンステーキはアメリカではなく、佐世保の日本人シェフが考案したそうで、日本人の口に合うように工夫を施されたものらしい。その歴史も長いそうだ。

 A級グルメ「レモンステーキ」とはいかなるものか。厚切りレモンを焼いたものではないだろう。佐世保駅ではレモンステーキ弁当も売られていたが、本場モノを店で食べてみたい。

 商店街をグイグイ歩くと、雰囲気の良い路地がある。その一角にレモンステーキ発祥の店<門>がある。休日のランチ時など、予約が賢明な超有名人気店らしい。

 様々なランチコースメニューがある中、もちろんレモンステーキを注文。赤ワインをグラスで味わいながら、前菜のサラダやポルシチを腹に入れる。

 鉄板がジュージュー音を立てて運ばれてきた。数枚の薄切り肉が超レア状態で並べられている。女性店員が目の前でさっとレモン汁をかける。柑橘系の香りがプワンと広がる。 

 一切れ口に運ぶ。……。柔らかく上品な赤身肉だ。ステーキソースは醤油ベースの和風。これにレモンの酸味が加わる。ご飯が進む味だ。薄切り肉6枚程度では足りず、もっとガンガン頬張りたい欲望に駆られた。後を引く味である。

 食後の珈琲を呑みながら、一息つく。さっぱりとした極上の味だが、ポン酢を付けて食べる鉄板和風焼肉定食、という感じがしないでもない。佐世保グルメの強かさを感じた。

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