2025年11月11日

第3790夜:雪見ラーメンの流儀【春日部(埼玉)】

 雪見。酒、大福(だいふく)、風呂…。雪を見ながら行う行為や酒、喰い物には旨さを倍加させるロケーションというスパイスがたっぷりと加わる。しかし、降雪量の多い北陸や北日本などに住んでいなければ日常なかなか体験できない。

 3月に入っても寒波襲来し、関東甲信越の大雪の注意報が出された雛祭りの日の夕方。大宮から東武野田線で春日部へ向かう。大宮駅前はみぞれがボトボト降り注いでいた。大宮駅を出ると、すぐに一面雪景色に。その光景が岩槻駅手前まで続く。

 私はこの夜、春日部駅からスカイツリーラインで2駅南下した武里駅前で2年間のラストミッションを控えていた。辿り着くのか…。何の遅れもなく春日部駅着。

 下車した7番線ホームのドアからほぼ正面に<東武らーめん>が屹立している。湯気で幻想的である。武里へ向かう12番線ホームへ向かうべくいったん店の前をスルー。しかし、立ち止まった。電車は普通に動いている。時計を見る。時間は充分余裕がある。

 意を決して反転し、引き返した。券売機と対峙。いつもならチャーシューメンを軸にワンタンをプラス、大盛で組み合わせていく。今日は「天玉ラーメン」にしてみた。

 サラリーマン、学生、女性独り客、年配者…。性別も年齢も背の高さも異なる老若男女がカウンターに正対している。駅ホームの立ち蕎麦は吹きっさらしでなく保健所の指導か何か分からぬがいわゆるボックスタイプに取って代わられている。春日部駅ホームは酷暑寒風のストロングスタイル。酷暑より寒風が熱々立ち啜りラーメンに相応しい。

 目の前でベテラン熟女店員が若い新人女性店員にレクチャーしている。新人が一生懸命湯ぎり。ベテランが具を手際よく並べていく。

 湯気が顔に温かい。麺は黄色い縮れ。天麩羅は巨大かき揚げ。玉子も固ゆで丸々1ヶ。チャーシューも分厚い肩ロース1枚。メンマもたっぷり。ワカメ、ナルト、葱とスキのない布陣。

 胡椒をパラリし、スープから…。シンプルかつ王道。このホームでこれまで何度啜ったか分からぬが、これがラストになるやもしれぬ。万感がこみ上げる。

 天麩羅は最初はソリッドで。後半はスープに浸す。天ぷらもコロッケもラーメンスープにはあまり合わないと思うが、このシンプルな醤油スープにはなかなかの相性。ゆで卵も黄身をスープに浸す。3分の2を啜り終えて、チャーシュー。1枚のありがたみ噛みしめる。

 汁1滴残さない熊啜。どんどん客が入れ替わる。日が沈みかけた空。そして、ミゾレが降り注ぐ。寒さも味のスパイス。

 雪の降る夕暮れの駅のホームのふきっさらしで啜る熱々の醤油ラーメン。これ以上に最高のシチュエーションはあるだろうか。

IMG_0194.jpg

IMG_0196.jpg

posted by machi at 08:23| Comment(0) | 埼玉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月10日

第3789夜:Black or White U【新長田(神戸)】

 <Ⅿ本むなし>。関西や東海をベースに展開している(らしい)豊富なメニューで味も良い定食チェーンである。24時間営業かつライス&漬物食べ放題。神戸新長田時代からお世話になっていた。その当時はワンコインのランチもあったと記憶する。

 アプリクーポンを使えば常に生卵、目玉焼、ポテトフライ、サラダの中から1品無料に。期間限定メニューも目が離せない。アプリで割引クーポンが付いてくる。

 3月に入って一気に暖かくなった夕刻。散髪を終え(ゴルゴ刈)、呑むには土曜とはいえ少々早い時間帯。昼を喰ってなかったので、何か腹に入れようと新長田駅前の<宮本むなし>へ。

 券売機の前に見かけぬPOPが視界に。「富山ブラック」。思いっきりラーメンのビジュアルである。その横には「富山名物 白えびラーメン」も。単品かと思いきや「定食」もあった。プラス130円でライス&漬物食べ放題になる。

 ここは神戸、新長田である。社長が富山出身者に代わったのか。そもそもこのチェーン、うどんはあるが頼んでいる人を見たことがない。ライス食べ放題を満喫する店だから。そして、ラーメンなどメニューに痕跡が全くない。

 アプリのクーポンを確認。富山ブラックか白えびラーメンが30円引きとあった。この日は迷わず富山ブラック定食(30円引き)に。無料の生卵もアプリのQRでピッ。私も使いこなせるようになったものである。

 冷たいお茶を飲みながら思いをはせる。富山市で仕事したことはないが、十数年前、まだ私が30代の頃、乗換の際に富山ブラックラーメンを啜った記憶がかすかにあるが、全く味も店も覚えていない(前夜の死蔵ブログを発見しても思い出せなかった)。

 ブツ降臨。本格的である。黒胡椒が添えられている。ゴリゴリと回し、まずはスープ…。立山連峰が眼前に現れた。黒部の太陽が昇りだした。しっかりブラックである。そして、とんでもなく旨い。豚肉やメンマ、スープがライスに合う。

 柴漬をボリボリしながらすかさずライスお代わり。麺も黄色く太い。富山ブラックが旨いというより、この店の富山ブラックが旨い。定食チェーンの余芸とあまり期待していなかったが、御見それいたしやした。

 ライス2杯、スープまで感触。しかし、生卵がまるまる残っている。麺を浸して食べるつもりが、あまりのラーメンの旨さに卵の存在を忘れていた。

 ライス3杯目をお代わり。スープすら残っていない。生卵に醤油を垂らし、ライスにぶっかけてワシワシ。柴漬をアクセントに。

 富山ラーメンフェアは後1か月とある。白えびラーメンは掛け値なしに啜ったことがない。いつまでもあると思うなフェアと期間限定。早めに「ホワイト」の筆おろしもせねばならぬ。

 それから一週間後の深夜1時前。明石からの帰り道に新長田で乗換ついでに25年通っているスナックへ半年以上ぶりに顔を出して鯨飲。終電が無くなった。タクシーが捕まらない。

 そのまま高架下を越えて<宮Mむなし>。一週間前はブラック。この夜はホワイト。富山名物白えびラーメンの定食である。無料の目玉焼に、唐揚を2ヶ追加。

 ブツ降臨。まずはスープ…。度肝抜かれる旨さ。あっさりでなく、むしろ濃い。海老の風味も効いている聴いている。塩ラーメンとすれば最強クラス。

 深夜12時を回って長田区内で啜れるラーメンはここしかないんじゃないか。宮本むなし、恐るべし。富山ラーメンフェアに続いてまたご当地ラーメンをメニュー化して頂きたい。

250301宮本むなし@神戸新長田.jpg

ブラック

250308宮本むなし@神戸新長田.jpg

ホワイト(白エビ)

posted by machi at 08:14| Comment(0) | 兵庫県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月09日

第3788夜:Black or White【富山(富山)】

 富山ブラック。何とも不穏で魅惑的な響きを有する言葉である。一般的な知名度は分からぬが、麺道を究めようとする者にとっては自明の理。富山で覇を唱えるご当地ラーメンである。

 十数年前の昼前。乗り換えのためだけに富山駅に降り立った私は、昼食に富山ブラックラーメンを啜るべくそこら中で改装中の駅舎を出た。関西の知人軍団にバッタリ邂逅するという嬉しき鳥肌経験の後、一人ブラックに染まるべく、駅舎近くの飲食店を探索し始めた。

 ブラックを求める私の視界に飛び込んできたご当地丼があった。「白えび天丼」。富山湾の貴婦人と言われている艶やかなピチピチ。思わず立ち止まった。魅力的なご当地料理である。

 黒か、白か。店の前で3秒ほど長考。米派と終わりなき終末戦争を展開している麺派の私は我に立ち返り、初志貫徹すべく黒へ心の振子を傾けさせる。もう、迷わない。観光案内所でランチマップを入手し、駅から最も近そうなラーメン店<一心>に向かった。

 店内はサラリーマン客でびっしり満員。地元客、それもサラリーマンや工事関係者で賑わう店に外れなし。カウンターに陣取った私は、メニューを見る。特に`富山ブラック´という表記はないが、メニュー写真のスープは確かに黒い。お店のダントツ一押しだった「煮玉子ラーメン」を注文。富山で最初に煮玉子を提供した店であることが記されている。

 ブツを待つ間、暇つぶしに店内ポップやメニューを斜め見る。化学調味料不使用完全無添加、ナントカ水使用、カルシウム、コラーゲン、麺とスープへのこだわり……。腹より頭が満腹になりそうな時、ブツが運ばれてきた。黒い。MJのように「フォ〜」と叫びそうになる。

 ラードが油膜を作り、漆黒のスープが揺蕩っている。煮玉子の黄金色が一際鮮烈。圧倒されつつ、まずはレンゲでスープを啜る。……。思いっきり和風魚介風味である。もっと胡椒辛い、もっと塩っぱいかと思いきや、マイルド。昔は濃厚ギトギトを愛していたが、年を重ねて魚介系にも心奪われるようになった私にとって、実に体になじむ味。

 食べ放題のキャベツキムチをラーメンと啜ると、過激さが増す。煮玉子も抜群で、麺もスープとよく絡む。化学調味料不使用完全無添加のため、パンチ力よりもバランス重視が見事。

 啜り終えて駅に戻る。売店で二つのカップ麺を発見した。「富山ブラック」(寿がきや)と富山限定「白えびらーめん」(イシダ)。黒か、白か。迷わず両方握りしめ、レジに向かった。帰宅後、あまり時を置かず啜り比べた。

 「富山ブラック」は鶏ガラと豚骨ベースらしいが、刺激満点の胡椒の味が存在感独り占め。全く<一心>さんのラーメンと異なる味。これが王道の富山ブラックなのか。富山湾の貴婦人「白えびらーめん」はかなり和風。白えびの旨さを全体で包み込む。優しく上品な味わいだ。

 ブラックが『BAD♪』のごときポップ味なら、ホワイト(白えび)は『ヒール・ザ・ワールド♪』のごときバラード味。マイケルの名曲『BLACK or WHITE♪』。私は……。

140307一心@富山.jpg

全く覚えていない。黒、というより赤。

140309富山ブラック@寿がきや.jpg

140310白えびらーめん@イシダ.jpg

(付記@)

今回はデータが残っていた十数年前の死蔵ストックをアップ。この内容、掛け値なしにほぼ覚えていない。自分自身の出来事と思えないが、次夜への前説である。

(付記A)

以降、他にもカップで「富山ブラック」を啜っていた模様。

240401富山ブラック@ヤマダイ.jpg

250527ごつ盛り富山ブラックラーメン@東洋水産.jpg

posted by machi at 06:32| Comment(0) | 富山県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月08日

第3787夜:カマタマぶっかけ【倉敷(岡山)】

 ぶっかけうどん。何となく字ズラからどんな品か想像つくだろう。「ぶっかけうどん」は一般的なチェーンうどん屋のメニューと思い込んでいたが、発祥の店が倉敷に屹立している。

 2月の寒い夜。井原駅を22時に発ち23時過ぎに宿のある倉敷へ。ユニットバスで凝りを解し、スーパーで買っておいた焼鳥を発泡酒とカップ酒3本で楽しむ。〆は岡山駅で捕獲しておいた山珍の豚まん2ヶをスーツケースに入れっぱなしのタッパに入れてレンジ。無双である。

 翌朝。珈琲飲みながら夢中でPC猿打していたら、予定していた岡山方面行の列車に間に合わなくなった。次は1時間後。

 チェックアウトして駅へ向かう途中にアーケード商店街がある。その先には美観地区。アーケード商店街は15年ほど前にサラっと歩いたっきり。居酒屋が増えた印象である。角地に広場も出来上がっていた。その広場横に「ぶっかけうどん ふるいち」が。

 ぶっかけうどんは倉敷名物なのか知らぬが、少なくとも<ふるいち>さんの名物だろう。岡山駅新幹線ホームにもあり、啜ったことがある。コシ系というよりもっちり麺。熱々を出汁醤油で味わった記憶がある。うずら玉子が印象的だった。

 商店街のこの店が何となくだが本店っぽい風情がある。岡山駅ホームにないメニューもありそうだ。次の電車まで45分もある。前夜は深夜1時ごろまでヘヤノミしそれほど空腹でないが、今度いつ倉敷に来れるかわからない。我が生涯、最後かもしれない。

 飛び込んだ。期間限定らしい「肉釜玉」を召還。『期間限定』というワードに私は弱い。

 目の前のPOPに、インスタでフォローするとうどん大盛かちくわ天が無料とある。ちくわ天、160円。インスタなど普段全く触らないが、フォローした。ちくわ天をお願いする。

 待つ間、再度メニューを見る。3種類のミニ丼が。とろろの山掛け丼に惹かれた。カマタマが770円、とろろ飯が350円。朝から1000円越えだが、昼も兼用なのでヨシとする。とろろ飯、つけものを従えてあっという間に眼前に。そして、カマタマ降臨。

 出汁醤油を垂らし、軽くかき混ぜて啜る…。不味かろうわけがない。ムヒムヒする旨さ。肉のカラミも良い。竹輪天が大きくてサクサク。ところが、一抹の寂寥が残る。

 ラーメンでもつけ麺やまぜ麺よりノーマルを好む故、やはりぶっかけよりも出汁たっぷりの汁麺になお愛が募る。味も、何故か新幹線駅ホームで急いで啜る熱々のぶっかけの方が旨い気がしないでもない。

 お会計の際、レジ横に天ぷら盛合せがあった。海老などたっぷり入って500円。ついでに捕獲。帰宅して、家に買い置きしている小山「きそば」出汁で「天ぬき」にして汁モノ欲求を観たす所存。岡山県か、栃木県の地酒で。

1.jpg

栃木市役所1階で買った焼鳥。出張グッズのタッパーに入れてレンジで温め。

2.jpg

栃木県の地酒。ワタクシにぴったりの名称。

3.jpg

栃木県の地酒。ワタクシとかけ離れた名称。

4.jpg

岡山県の地酒。妙に力強い。

5.jpg

岡山駅改札内で捕獲。旨いです。

6.jpg

同じく出張タッパーでレンジ温め。

7.jpg

気持ち良いほどの通路としての割り切りっぷり。

8.jpg

岡山駅新幹線ホーム以外で初ダイブ。

9.jpg

肉釜玉(期間限定)、とろろ山掛け丼(セット)、ちくわ天ぷら(サービス)。

10.jpg

レジ横をテイクアウト。

posted by machi at 03:01| Comment(0) | 岡山県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月07日

第3786夜:一松アゲイン【井原(岡山)】

 一松醤油ら〜めん。令和6年度、私が最も衝撃を受け舌が震え瞠目刮目させられたラーメンである。岡山県内を疾走する(総社〜神辺)井原鉄道の井原駅から井原町公民館の間に<ら〜めん一松>は屹立する。

 寒い真冬の日が沈みつつある黄昏時。18時前に井原駅着。これより1本遅くなると駅から徒歩30分以上かかるミッション会場(井原町公民館)へギリギリになる。18時前に到着すると、むしろ早すぎて時間を持て余す。

 駅から会場へブラブラ向かう途中に24時間スーパーやディスカウントストア、100均などがある。それらに立ち寄るかとホタホタ歩いていると<一松>の前を通りかかる。

 夜の部が始まっていた。店の前に行列がない。気づけば店内へ飛び込んでいた。

 私はリュックを背負っている程度だったが、荷物が多いからと3人掛け席に案内して下さった。接客が最高クラスに好ましい。私の入店後、店内はあっという間に満席に。カウンターも埋まり、3人掛けが申し訳ない気分になる。

 この店の「一松醤油らーめん(鶏ガラ)」は令和6年度最大の衝撃。ノーマルでも大きなチャーシューが1枚載っているが、さらに追加トッピングする。

 ときめきを押さえらずウキウキと待つ。10分ほどで着丼。黒目がハートに。びっしりチャーシュー。麺が、背脂が見えぬ。たった250円追加するだけで大輪の肉の華が咲き誇る。

 着丼と同時に替玉を注文。お客ひっきりなしゆえ、独りで3人掛け独占者は瞬殺を心掛けねばならぬ。1秒も無駄にできない。

 胡椒をパラリ。まずはレンゲでスープ…。DNAレベルで躍動。シアワセの薔薇。麺を啜り、たっぷりチャーシューを齧る。無我夢中だが、スープを残しておかねば替玉が啜れない。

 麺を啜り切るころに替玉降臨。替玉をオンし、辛子高菜をたっぷり投下。ラー油も少し。豪快に味変し、2杯目を楽しむ。替玉、わずか120円。あっという間に啜り終えた。

 毎回大勢が参加されるミッション終了後、再度ブラブラと井原駅へ。早く着きすぎると極寒のホームでかなり待たねばならぬ。清音まで30分以上、さらに清音駅ホームで15分待機。

 途中の24時間スーパーで缶チューハイ2本、40%引きのおにぎり1ヶ、いりこ天麩羅などを捕獲。22時8分の終電、一両編成だが客は私だけ。輸送コストを考えたら採算は取れぬはず。この日の終電は大原美術館とコラボ「アート列車」。美術館を独占、と言えぬこともない。

『ギャラリーフェイク』の30年来の愛読者だが審美眼のない私は缶チューハイをカシュと開けた。車内の絵画を愛でることなく、生臭いニュースばかりの朝刊を読みながら。

IMG_0028.jpg

衝撃的に旨すぎるラーメン屋さん。

IMG_0031.jpg

びっしり。

IMG_0034.jpg

替玉。辛子高菜をオン。

IMG_0047.jpg

この夜の終電はアート列車。

IMG_0048.jpg

貸切状態。お疲れさまでございました。

posted by machi at 05:10| Comment(0) | 岡山県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする