「鮭冬葉(さけとば)塩」などいかにも北海道らしいブツもあるが、ここは「焼豚味噌」である。
メシものも喰いたくなった。ミニいくら丼(880円)、山わさび巻などに心動くも、「ウニ醤油の玉子かけご飯」(380円)を召還。ウニ醤油、心ときめくではないか。
ぼんやり水を飲みながら店内を見渡していると、ブツが降臨。はみ出さんばかりの焼豚が迫力である。進化が止まらない札幌系味噌とお見受けする。紙エプロンが欲しい雰囲気だ。
店員さんはその気持ちを察したのか「紙エプロン、お使いなりますか?」。瞬殺で首肯しながら「お願いします!」。
すかさず店員さんはポケットから丁寧に折りたたまれたブツをを「はい、どうぞ!」。しかもペラペラで結ばねばならぬタイプではなく、そのままスポットかぶれる丸首タイプ。天晴である。
生唾を呑みながら胡椒をパラリ。さっそく啜ろうとしたら、店員さんが別皿で大きなチャーシューを運んできた。うん?特に追加していないが……。
戸惑っていると「そちらのチャーシューが少し薄いので、もう1枚お持ちしました」。
魂のレベルから震えた。少しも薄くないチャーシューなのに。メニューを見れば、1枚150円。サービスの斜め上を行く、誠実。リピーターを掴むコツを心得ていらっしゃる。
スープを啜る。……。喘ぎ声が漏れそうになる超絶味噌。どうすればこの味のグラデーションを構築できるのか。麺も黄色いかん水が効いたちぢれ。これが味噌と辛み絶妙のエロさに。
チャーシューは焙っているバラ。噛みしめるほどに柔らかく旨味が湧き出る。これが、2枚もある。どこが薄いのか。分厚いのに。札幌進化系はすりおろし生姜がチョンと乗っているものが多い気がする。後口がさっぱりする。
大満足で完啜。丼にはスープが3分の1ほど残留。ここで、ウニ醤油玉子かけご飯である。
スプーンで混ぜて、口に運ぶ。……。「アハッ」と思わず笑い声が出た。一本取られた。玉子かけご飯がウニ醤油にになるだけでこんなに旨く、上手く、美味く、巧く、甘くなるのか。家庭再現困難な逸品。大正解である。
ウニ醤油玉子ご飯を口に運びながら、極上の味噌スープを味噌汁代わりに。下品という名の作法。しかし、やめられない。
数年前の新千歳空港での評価が完全に裏返った。今度新千歳ラーメン道場に足を運んだら、もう一度絶対に手合わせをお願いしたい。礼節の気持ちをもって。〔次夜最終〕
